2011年09月22日
各位
石油連盟
東日本大震災を受けた国のエネルギー政策の見直しに係る
石油業界の提言(一次提言)
<基本方針>
エネルギー政策の3Eの同時達成と優先順位の明確化
- 「エネルギー政策基本法」が目的とする3Eの同時達成は重要。
- 今回の東日本大震災を契機として、2030年に向けて3Eそれぞれの目指すべき方向性を見直すことが必要。
- 3Eの同時達成を目指す中で、その優先順位については、(1)エネルギーの安定供給の確保、(2)経済性、(3)環境への適合(地球温暖化対策)とすべき。
- エネルギーの安定供給の確保
・ エネルギー供給構造の脆弱なわが国にとって、3Eの中でも「エネルギーの安定供給の確保」は、国の安全保障にも係る問題であり、優先すべき国の政策目標。具体的には、これまで目指してきたエネルギー資源の確保や自給率の向上に加え、"平時のみならず災害時等の緊急時を含めた最終消費者への供給確保"も基本的目標として加えるべき。 ・ 最終消費者への供給確保を含めた広義の「安定供給の確保」をエネルギー政策の優先目標と位置付けるべき。 - 経済性
・ 「エネルギーの安定供給の確保」に取り組む中で、エネルギーコストの上昇による国際競争力の低下や産業空洞化などをもたらすことのないよう、「経済成長」との両立が重要。 ・ したがって、安定供給の確保や再生可能エネルギーの導入拡大に伴うエネルギー供給コストの増加、需要面での省エネによる経済的負担などを十分踏まえ、国民経済に対する過度な負担増加は避けるべき。 - 環境への適合(地球温暖化対策)
・ これまでの数値目標ありきの温暖化対策は見直し、実現可能な目標を再検討すべき。そのためには、産業部門に対しては世界最高水準のエネルギー効率の達成を目標とし、排出量取引など規制的手法は導入すべきではない。 ・ 「エネルギーの安定供給の確保」を最優先に取り組む中で、わが国の特長を踏まえた省エネの強化・再生可能エネルギーの導入拡大を基本方針とすべき。 ・ また、世界で省エネが最も進んだわが国でCO2削減に取り組むだけでなく、わが国の世界トップクラスの省エネ・低炭素技術を途上国等で展開することを軸として、地球規模でのCO2削減に取り組むべき。
<石油に関する提言>
可搬性・貯蔵性・利便性等エネルギー特性に優れ、緊急時対応力に優れる「石油」を再評価するとともに、国民生活・国民経済を支える基幹エネルギーとしての位置付けを更に高めるべき。
- エネルギーの安定供給の確保とベストミックス
・ エネルギー資源の確保と緊急時における最終消費者への供給確保を目指した「エネルギーの安定供給の確保」を優先目標とし、3Eの同時達成を目指した2030年に向けた「あるべきエネルギーのベストミックス(電源構成を含む)」を再検討すべき。 ・ また、原子力政策の見直しに伴う将来の電力供給力の見通しを踏まえた電気とその他のエネルギー(石油・天然ガス)の役割分担、緊急時対応にも配慮した分散型エネルギーのあり方を検討すべき。 (1) これまでの需要面での電化重視政策を見直し、国民生活に直結した暖房・給湯・輸送部門では緊急時対応力に優れた石油利用を推進すべき。 (2) 加えて、緊急時対応に優れた石油を燃料とした分散型電源を積極的に導入し、大規模集中電源とのベストミックスを追求すべき。 (3) 電源構成に占める石油火力の位置付けについては、供給が不安定な再生可能エネルギーの導入が拡大する中で、供給安定性に優れた電源としての火力の重要性を明らかにして石炭・LNGを含めたベストミックスを達成すべき。 - 石油のサプライチェーンの維持・強化
・ 国民生活・国民経済にとって必要不可欠で、エネルギー供給のラストリゾートである「石油」の重要性を踏まえ、将来にわたって安定的な石油需要と供給確保が必要。 ・ 「石油」の安定供給を確保するため、緊急時対応も視野に入れつつ、石油のサプライチェーンの維持・強化を進めることが必要。
【参考】東日本大震災で石油が果たした役割
- 緊急車両用燃料(ケガ人・病人の搬送、消防)
- 救助・物資輸送等のヘリコプター用燃料(自衛隊、消防)
- 非常用電源用燃料(病院など重要施設、原発冷却装置)
- 救援物資の輸送用燃料(食糧・医薬品・生活物資の搬送)
- 被災者の避難・移動、原発避難区域から移動のための車輌用燃料
- 電気・ガスがストップした地域や家庭・避難所等における暖房・給湯・厨房用燃料
- 瓦礫撤去など復旧・復興のための重機用燃料
- 電力会社の石油火力発電用燃料(原発等の大規模発電所停止時、化石燃料による火力発電でバックアップ)など