『京都議定書の延長には反対です』
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昨年のCOP15(気候変動枠組条約第15回締約国会議)では、いわゆる「コペンハーゲン合意」が策定されました。一部の国が反対したため採択には至りませんでしたが、「コペンハーゲン合意」は、各国がボトムアップで目標を策定すること、その達成に向けた行動を重視すること等、公平かつ実効性ある新たな枠組みの土台となりうることは、既に140カ国が賛同もしくは賛同する意思を表明していることからも明らかです。しかし、それ以降の国際交渉では、先進国と発展途上国との対立がむしろ鮮明になり、新たな枠組み構築の議論は膠着状態に陥っています。こうした状況にかんがみ、一部の国(特に発展途上国・EUなど)において、2013年以降に、何らかの形での「京都議定書の延長」を望む動きがみられます。また国内でも、他国から「日本が京都議定書を殺した」という非難を受け、国際的に孤立することを恐れる意見が一部で見受けられます。
しかしながら、京都議定書は、削減義務を負う対象国が、地球全体のCO2排出量のわずか3割弱しかカバーしておらず、主要排出国である米国・中国・インドが対象となっていない極めて不公平かつ実効性の乏しい枠組みです。その中で、特に経済成長著しい中国やインド等は、今後、一層の排出量増加が見込まれており、京都議定書の温暖化対策としての実効性はますます低下することとなります。
万が一、京都議定書の枠組みが継続されれば、
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(1)我が国産業の国際的な「イコールフッティング」が図れない状態が長期化し、経済・雇用にも甚大な影響を及ぼします。
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(2)この結果、我が国よりもエネルギー効率の劣る他国の生産増につながり、地球規模でのCO2排出増を招いてしまいます。
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(3)何よりも、日本政府が目指している「全ての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組み」の早期構築に向けた国際的なモメンタムが喪失します。
地球温暖化の防止に向けて、今、必要なのは、一刻も早く「全ての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組み」を構築することに尽きるのであって、実効性に乏しく国際的公平性もない状態をさらに継続することを意味する「京都議定書の延長」は、「次善」の策などではなく、極めて「不適切」であるといわざるを得ません。
菅首相は、国会答弁において、「京都議定書をそのまま暫定的に延長することは、わが国の選択としてはあり得ない。それは取るべき道ではない。」と述べました。この発言に強く期待するとともに、日本政府におかれましては、厳しい国際交渉の中で、日本が保有する優れた環境技術・製品の開発、普及を通じて、引き続き地球規模での温暖化防止に貢献することを主張して頂き、「全ての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組み」の構築に向けて、真のリーダーシップを発揮して頂き、万が一にも、「京都議定書」延長を受け入れることがないよう、強く要望致します。
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